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2024年10月13日

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年間第28主日
マルコ(10:17-27)

戸塚・原宿小教区管理者
​田丸 篤神父

私たちもイエス様から「あなたに欠けているものが一つある」と言われるとしたら、私たちはそれをどう受け止めるでしょうか。今日の第一朗読の知恵の書では、神様に長寿や富ではなく、訴えを正しく聞き分ける知恵を求めたソロモンの思いが描かれています。

若くして王になったソロモンは、主から「何でも願うがよい。あなたに与えよう」と言われたとき、長寿や富ではなく、訴えを正しく聞き分ける知恵を求めました。それが神様の目には正しく映りました。冨ではなく知恵を願ったソロモン。現代を生きている私たちにも必要なことは、この心の姿勢だと思います。

 

今日の福音の中で、ある人が走り寄ってイエス様に尋ねます。「永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか」。そしてその問いにイエス様は十戒の掟を示され、「殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え」という掟をあなたは知っているはずだと答えられます。それに対してこの人は「そういうことはみな、子どもの時から守ってきました。」と答えます。確かにこの人は、「こういうことをしてはならない」という意味での掟はきちんと守って生きてきたのだと思います。まじめに悪い行いもせず歩んできたのがこの人の人生の姿だったかもしれません。でもこの「十戒が示している掟の心」を彼はどのように理解することができていたでしょうか。「殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え」という掟は、ただ掟に反することをしないということではなく、どの掟もすべて、隣人を大事にしなさいということにつながっています。殺さないのも、姦淫しないのも、盗まず、偽証しないのも、すべてそれらが隣人を傷つけることになるから、隣人を大事にすることにつながらないからです。十戒はただ禁止事項を述べたのではなく、神様が望んでおられる、私たちが互いに隣人を大事にし合ってより積極的に生きる、そのことへの呼びかけだったのです。イエス様はそのことを踏まえてこの人に「あなたに欠けているものが一つある。行って持っている物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる」とおっしゃいました。

 

イエス様は彼を見つめ、慈しんで言われたとあります。イエス様は彼の今までの歩みを責めたり、非難しようとされたのではありませんでした。慈しみを持って、あなたにとって大事なことはこのことなんだと、それをやさしく諭されたのです。イエス様は決してこの人を退けようとはなさったのではありませんでした。しかし、結果としてこの人は悲しみながら立ち去ったとあります。たくさんの財産を持っていたからです。ここに富を持って神様に従うことの難しさが示されます。「財産のある者が神の国に入るのは、なんと難しいことか。金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」なぜ、金持ちであったら神の国に入るのが難しくなるのでしょうか。冨を持てば持つほど、それを手放すことが難しくなり、より執着心が強くなってしまうからでしょうか。豊かになると、同時に失ってしまうものがあるというのが、今日の福音のイエス様からの大切なメッセージです。

 

生活が豊かになる一つの大きな危険は、自分中心の生活になっていきやすいということです。ある程度生活に余裕が出てくると、わずらわしい人との関係を築かなくても自分の世界だけで生活していくことができます。人の苦しみや悲しみを見なくても、感じなくても1日を過ごすことができます。面倒な関わりや交わりを避ける。そして人の苦しみ、悲しみに無関心になる。金持ちが神の国に入ることが難しいのは、苦しんでいる人のことを思い胸を痛めることが、金持ちになるごとにだんだん遠くなってしまうからかもしれません。逆に苦しみや困難があってもそこに人とのふれあいやあたたかい交わりがあるなら、それが救いとなり、永遠の命につながるということです。私たちが神様と出会うためには、私たち人間同士の中で、互いを受け入れたり、相手のことを思ったり、そして祈ったりすることが必要です。その他者との交わりにおいて私たちは神様と出会うことができます。

 

「あなたに欠けているものが一つある」とイエス様はこの人に呼びかけられました。この私に対しては、イエス様は何が欠けているとおっしゃるでしょうか。今日私たちが聞いたこのイエス様の言葉を大事に受け止めて、一人ひとり自分のあり方を振り返ってみたいと思います。そしてそれを通して私たちも真の意味でイエス様に従って歩むことを願っていきたいです。私たちの救いはその生き方の中にあります。

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